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ベトナムの今を知る!最新コラム

はじめに

昨今、成長著しいと注目を集める「ベトナム市場」。2022年のGDP成長率は過去最高の8.02%を記録し、「チャイナプラスワン」を追い風に続々と中国からの生産移管を進め、輸出入 も好調に黒字を維持している。そうした製造拠点としての成長は所得、そして個人消費を活発 にし、近年では魅力的な「消費市場」として商品やサービスの上市を検討する企業が増加している。 文化的に通ずるところもあり、長年にわたる公的支援のおかげか日本に対する心象も良く、新日国家だ。 グローバル展開を望む日系企業にとって魅力度は増すばかりだ。 今回は近年ベトナム市場に参入を検討する企業が特に多い3 つのカテゴリについて近況を簡単にお伝えしたい。

<目次>

  • ①化粧品・スキンケア市場トレンド
  • ②健康食品市場トレンド
  • ③EC市場トレンド

①化粧品・スキンケアトレンド

ベトナムで販売されている化粧品やスキンケア製品は、基本的に海外ブランドの商品ばかりである。デパートコスメブランド、欧米や韓国、日本のブランドが進出しており、最近では現地・隣国での製造によって仕様や価格をローカライズしたアイテムも登場した。買い場も外資小売チェーンが強く、「Beauty box」、「Watsons」、「マツモトキヨシ」も進出している。

◆「美白ブーム」はもう終わり?

日差しの強い南部の都市・ホーチミンでは、「日本人のように肌が白くなりたい」という願望が強いと思われていた。SNSの普及や韓国ブランドの進出、K-POPカルチャーの人気を背景にベトナム独自の美容観が生まれ、「健康的な自分らしい肌」を目指す傾向が高まりつつある。変わらない点としては「ニキビ」が未だ根強い肌トラブルとして一般女性を悩ませ続けていることだ。暑さによる過剰な皮脂分泌、毛穴の開き、さらには大気汚染による外気の汚れ、東南アジア独特の糖分過剰摂取が原因だと考えられており、都市部のオフィスで働く女性たちはスキンケアだけではなく食生活に気を配り、砂糖入りの飲み物を控えるなどし、健康的な肌を維持するよう心掛けている。

◆選ぶ姿勢に変化も

コロナ中に経験した厳重なロックダウンの中でセルフケアに一層関心をもつようになったとの声も多い。美容系Youtuberやモデルたちの美容コンテンツに触れる時間が増えたことが大きい。元々、ベトナム人は身近な友人や家族の意見を基に購入意思決定をする傾向が強い。美容カテゴリーの商品においてはそうした「第三者の声」の有無がより強く購入意思決定を左右する傾向が強まった。ベトナムの店頭にある外国製商品であっても、「自国で売れているかどうか」、「自国内での口コミが良いのか」を気にするという。ベトナム生活者の選択肢が増えた今、商品力はもちろん、「どういった情報を配置するか」も深く検討する必要がありそうだ。

②健康食品市場トレンド 

ベトナム経済の成長に伴い、個人の給与が上昇し、全体的な健康意識は確実に高まっている。ベトナム人は体の不調が生じた時点で市販薬・通院により対処する傾向が強かったが、直近ではコロナ禍の経験から「将来何が起こるか分からないから事前に対策を打つ」感覚が強まった。実際に公的保険以外の民間健康保険への加入率も増加したという。「健康食品」への関心も強く、コロナ禍以降その取引額が増加している。

◆健康食品の買い方

体の不調を感じたときに訪れる薬局カウンターでは薬を服用回数単位で購入でき、病院へ行くよりも手軽で安く済む。そして症状があるわけではないが気になる健康課題においても薬局で相談することが多く、そうしたOTCで健康食品を購入するケースが多い。薬局機能をもった近代的ドラッグストアの店舗数も増え、さらに身近に健康食品を手にする機会が増えている。また最近ではECモール、商品ECサイトでの購入も顕著である。その弊害として、オンライン上での誇大広告を行い検挙される企業もあり、ECで購入する場合はいかに信頼できる商品であるかと判断の目が厳しいのが実情だ。

◆まず「理解される」こと

ベトナムにおいて健康食品を販売する際、ルールがいくつか存在する。規制の中で正しく商品を理解させる工夫が必要である。効果がイメージしやすい成分であれば理解されやすく、注目もされやすい。しかし成分の認知がない場合や、成分と効果が遠い場合は、成分の効果やメカニズムをいかに分かりやすく訴求できるかが重要になる。作り手であるメーカー側がいくら手塩に掛けて作った商品であっても、そもそも「何のために使うのか」を理解できない場合は購入に結びつきづらい。既に海外からの輸入品が豊富に並ぶベトナムの健康食品市場において、ベトナム人の生活を想像し、ニーズがある商品がどうかを見定める必要がある。

③EC市場トレンド

今や買い場として欠かせない「EC」。1975年のベトナム戦争終結を経て急ピッチで近代化を遂げる中で、デジタル化が急速に進んだ。ただのITオフショア拠点ではなく、アジアのITをけん引する国へ成長させたいと国家単位で取り組んだこともあり、ここ数年のうちにECの浸透が進み、オンライン上での購買活動はさらに活発になった。ベトナムEC市場の2018年~2022年における年平均成長率は+15.0%、2022年~2025年の年平均成長率は+37.1%という極めて高い水準に達するものと見込まれ、その取引額は2025年までに320億USD(約4兆1600億円)に上ると予想されている。その成長加速度は東南アジアでも群を抜き、ASEANの中ではタイを上回る市場規模になりつつある。

◆モールがけん引

EC市場の内訳は大きく物販とサービスに分かれる。物販においては3大ECモール「Shopee」「LAZADA」、「Tiki」、また、電子機器やアパレル分野の地場小売チェーン自社ECの存在感が大きい。また、アパレル分野においてもEC化が進んでおり、外資「UNIQLO」「ZARA」、またEC専門の「SHEIN」も上市している。サービス分野においては「Grab」率いる交通系、食事・食品デリバリーがコロナ以前より普及しており、1ユーザーあたり複数のデリバリーアプリを使い分けている。コロナ禍以降、生鮮食品の販売も活発になった。

◆ハンドキャリー

ベトナムEC市場の大きな特徴のひとつは「SNS上での売買」が盛んなことである。国民的SNS「Facebook」においても購買活動が行われており、最近では「TikTok Shop」機能もサービスを開始している。そうしたSNS上でよく目にするのは「ハンドキャリー」、いわゆる個人輸入品である。戦争を機に国を離れ他国に暮らす人ベトナム人、いわゆる「べっきょう」を情報源に、アメリカや日本をはじめとする国々から商品を持ち込み販売されている。日本に住むベトナム人が、SNS上でリクエストを受けた商品を購入し、ベトナムの依頼人へ配送を行う代理購入サービスも存在する。

◆未だに「代引き」

EC文化への適応は早かったが、オンラインペイメントの普及は予想以上にスローペースである。理由としては今だ悪質な販売者による配送・商品不備、カードやオンラインペイメント上の不正取引、キャンセル対応の不備による「信用のなさ」が生む「COD」、代引き需要だ。クレジット・デビットカード払い、もしくは銀行オンラインアプリによる「銀行振り込み」がほとんど、最近になって電子マネーがやや一般化した程度である。弊社実績でも9割以上が「代引き」での決済であった。

参考:JETRO、VIETJO

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